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2007年09月25日

皮革の国際経済学

ノグラボストアの革カバーはどこから来たのか(4)

みなさん、こんにちは。ノグラボの山本です。

革のお話は今日で最終回です。
前回は、世界の革業界が大変な状況にあるという話でしたが、
実は、革小物の分野でも、急激に成長している部門があります。
それは、海外からの輸入なのです。
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(社団法人日本皮革産業連合会ウェブより筆者作成)

革小物っていうとまさに手帳カバーやキーケース・名刺入れのことですが、
この市場では、過去8年間で5割も輸入金額が伸びています。
日本の皮革産業が縮小する一方で、海外製品の成長はすごいということなんですよね。

では、国別の輸入ランキングを見てみましょう。

graph10.jpg
(同上)

量として圧倒的に多いのはやはり中国です。
製造業と同様、革小物も中国生産にシフトしているということです。
現に、イームズカバーは、中国で縫製していますしね。
じゃないと、こんな価格では販売できないのです。

ただ、革製品は、単なる製造業ではなく、
職人的な技術およびブランドが問題になってきますよね。
現に、このランキングのうち、半数以上が先進国からの輸入です。
単純に途上国にすべてが流出しているというわけではありません。

ちなみに、輸入量を金額で割った単価を出してみると面白い結果になります。
どのメーカーからの輸入が影響を与えているのか、想像がついて面白いです。

graph11.jpg
(同上)

圧倒的にフランスの輸入単価が高いのがお分かりでしょうか。
なんと中国の13倍です。
中国と先進国の人件費はおよそ6倍〜10倍程度と言われていますから、
この差は、人件費を吸収してあまりある金額です。
これが「ブランド」ということなんですよね。
ヨーロッパ諸国は、アメリカと並ぶ巨大な先進経済圏ですが、
その中でも、モノづくりで高い価値を生み出していることがわかります。

さて、これまで見てきたことから、
日本の皮革業界についていくつかのことが言えると思います。

一つは、日本の皮革業界は効率化が必要だということです。
今後も革の価格が下落する見通しがない以上、重要な課題です。
たとえば、オーソドキシーは、デザイン・製造・販売まですべてやっています。
デザイナーと職人がタッグを組んで、店舗を運営しているわけです。
これは「垂直統合」と言われることがあります。
職人が一人でやっている個人店舗はどれもこの形態ですが、
オーソドキシーはそれを組織化しているという点でユニークな存在です。

今後は、業界全体としてみると、国内の牧畜産業がなめし工場と提携するとか、
なめし工場が革製品の生産と販売まで一貫して行うとか、
すべてを商社がコーディネートするとか、再編成の方法は色々あると思います。
実際に、その方向に進んでいくのではないかと思われます。

もう一つは「高品質化」と「ブランド化」ということです。
みなさんは、オーソドキシー以外に、
国内産の革を使って国内で生産する革製品ブランドって、すぐにあげられますか?
なかなか難しいですよね。
国内のブランドでも、海外の皮革を使っているケースが多いのは、
これまで国産の皮革の良さが十分に伝わっていなかった面もあると思います。

国内産の革を使って、国内で生産する革製品がより成長し、
海外に出ていけるようになるといいですよね。
ブランドってヨーロッパだけのものじゃないです。
時代は、「クールジャパン」ですから、
日本の風土から生まれた日本の革製品が世界に通用するようになると
いいと思いませんか?

Whitehouse Coxなどと並んで、オーソドキシーの製品を
ノグラボが取り扱おうと思うようになったのは、
こうした思いも背景にあるのです。

さてさて、4回にわたって書いてきた連載記事、いかがでしたか?
革業界って、こんなにもグローバル化しているんだということは、
始めて知った人も多かったのではないでしょうか。
本当は、まだまだ面白いデータがあるのですが、それはまた別の機会に。

今後、日本初の革製品がグローバル化していくのを見てみたいと思います。
もしかすると、数年後には、「超」整理手帳とオーソドキシーのカバーが、
イギリスで販売されているかもしれませんね。

投稿者 Nogulabo : 02:15 | コメント (0) | トラックバック

2007年09月23日

皮革の国際経済学

ノグラボストアの革カバーはどこから来たのか(3)

みなさん、こんにちは。ノグラボの山本です。

前回からのテーマの続きです。

ノグラボで扱っている皮革の価格は、ここ数年でいずれも急上昇しています。
Whitehouse COXやイームズの場合、円安も一因です。
しかし、オーソドキシーの革まで大きく値上がりしているのです。
原皮の輸入価格はそれほど上昇していないのに、なぜなんでしょうか?

それには、統計を調べただけでは出てこない問題があります。
それがBSE(牛海綿状脳症)なのです。

もともと、米国をはじめ、多くの国では、牛の成長を促進させるために、
肉骨粉を飼料に用いていました。

しかし、BSEの原因となるといわれる異常プリオンが肉骨粉に多数含まれていることがわかり、
BSE問題以降、肉骨粉は使われなくなってしまいました。

もちろん、牛と人間の健康のためには、その方がよいと思うのですが、
ここで問題が発生したのです。

まず、BSEの疑いのある牛は世界中で処分されてしまいました。
この場合、肉だけでなく、皮も一緒に焼却処分したので、
世界中で一気に原皮の在庫が減少したのです。

また、肉骨粉を与えない牛の成長は遅いという点から、
同じ年齢の牛でも、取れる皮の量が減少しました。
また、長く育てれば育てるほど、皮の表面の傷も増え、
良質な原皮が取れなくなってしまったのです。

こうして、世界的に革価格が高騰する一方で、革の品質は低下しました。
その結果、今まで通りのクオリティの革を使う限り、
革の値段が極めて高くなってしまうという問題が起きてしまったのです。

オーソドキシー、Whitehous Cox、イームズのイタリアン・オイルドレザーは、
いずれも品質を下げることで価格を維持するのではなく、
最高の革を使って、最高の品質を維持するとの理念から、
最終的な商品価格の値上げに踏み切っています。

また、Whitehouse Coxに至っては、今までのような多色展開をやめ、
革本来の品質をより高める方向にシフトしています。
単なる価格上昇ではなく、それ以上に品質をあげているのです。

ノグラボの革カバーが、いかに苦しい状況の中で品質を追求しているか、
おわかりいただけたでしょうか。
これらの革製品は、現在はもはや嗜好品といってよいくらいです。
お買い求めいただいた際には、ぜひ大切にお使いくださいね。

投稿者 Nogulabo : 23:44 | コメント (0) | トラックバック

2007年09月22日

皮革の国際経済学

ノグラボストアの革カバーはどこから来たのか(2)

みなさん、こんにちは。ノグラボの山本です。

昨日の続きです。
革というのは、実は興味深い商品で、
原皮から製品まで、1国ですべてをつくっていることは少ないのです。
なぜなら、原皮とは「牛の皮」ですから、酪農国で主に生産されます。
他方、「なめし」は革工場という近代的な工場が必要です。
日本でも、近代的な革工場は、20世紀に入って日露戦争以降、
軍靴の生産により、発展してきたという歴史があります。

また、縫製には、縫製職人や職工さんが必要です。
工場をつくるには、近代化が必要ですし、
優秀な職人さんの場合は、地域的・歴史的な蓄積がモノをいいます。
したがって、これは国際分業が成り立つ世界なのです。

ちなみに、オーソドキシーが使っている栃木レザーでは、
主に北米中心の原皮を使っているそうです。

実際に、2006年の日本全体の原皮の輸入データを見てみましょう。
graph2.jpg
(社団法人日本皮革産業連合会ウェブより筆者作成)

日本全体からみても、アメリカ、オランダ、オーストラリア、カナダなど、
牧畜産業が盛んな国から原皮を輸入していることがわかります。
なかでも、米国からの輸入が7割近いのは驚きですね。
そう、アメリカは世界最大の原皮輸出国なのです。

他方、海外の革工場で生産された革の輸入は徐々に増えています。
2006年の皮革輸入国のランキングを見てみましょう。
graph6.jpg
(同上)

ブラジル、中国、オーストラリア、ニュージーランドで全体の7割を占めています。
中国の牧畜産業は、ここ10年間に大きく成長しています。

他方で、英国やイタリア、デンマークといった国名も見られます。
これらの国は、高品質な革を作っているのです。
イームズに使われている、イタリアン・オイルド・レザーは、
原皮はおそらく北米やEU諸国のものを使い、イタリアの革工場で生産されています。
その革が日本に来ていることを考えると、
牛の皮が革製品になるまで、まさに地球を一周していることがわかりますね。


さて、ここで少し暗い話になってしまいます。
我が国における過去8年間の原皮及び皮革の輸入量推移を見てみましょう。
graph4.jpg
(同上)

金額ベースで見ると、傾向はより顕著に見られます。
graph12.jpg
(同上)

1998年と比べると、2006年の輸入量はほぼ半減していることがわかります。
日本の革生産は、急激な勢いで低下しているのです。

もともと、日本でつくられていた革は、革靴や革かばんなどに使われていました。
しかし、ナイロン等の普及によって、革製品の需要が低下したため、
1980年代から次第に革製品の生産は低下しています。

1990年代に入り、GATTウルグアイラウンドの結果、
革の関税が低下したことによって、海外製皮革の価格が低下します。
そして、21世紀に入ると、途上国が生産する革が一気に増加するのです。
その結果、国内では廃業する革工場が相次ぎました。

こうしてみると、国内産の革が値上がりしているのは、
取り扱い量の減少に伴って、コストが高まってしまっているところと、
革工場自体が大きく減少したからという構造的要因は無視できません。

もともと、革工場とは、沢山の人員を必要とする労働集約型産業です。
また、クロムを使う工場は環境問題のため、先進国ではもはや操業できません。
したがって、90年代以降、発展途上国の皮革生産が上昇し、
その一方で、先進国での生産は低下し、21世紀に入り生産量は逆転したのです。
graph8.jpg
(FAO資料より)

もちろん、なめしの過程で必要な植物タンニンもすべて輸入品ですし、
工場の稼働にはエネルギーが必要です。
昨今の円安基調とエネルギーの高騰が革生産のコストをさらに押し上げているわけです。

こうしてみると、いまや日本で生産されている革は稀少な革といってよさそうですね。

さて、ここまでは、革の生産プロセスの話でしたが、
もう一つ、革のコストをあげている重要な問題があります。

ということで、続きます。

投稿者 Nogulabo : 16:43 | コメント (0) | トラックバック

2007年09月21日

皮革の国際経済学

ノグラボストアの革カバーはどこから来たのか(1)

みなさん、こんにちは。ノグラボの山本です。

「超」整理手帳ユーザーの中には、革小物好きがたくさんいます。
革の匂いや感触、使っていくうちに変化していく様子など、
革は五感にうったえてくる素材です。
さらに、小物のジャンルでは、革は最も高級感のある素材です。
「持つ喜び」を味わうことができるもの、それが「革」なのです。
手帳ユーザーの多くの方が革好きなのは、当然といえるかもしれませんね。

ノグラボストアでも、Whitehouse Cox、イームズ、オーソドキシーと、
3種類のブランドから皮革小物を扱っています。

オーソドキシーの革に関しては、栃木レザー訪問したり、
オフ会の時に今野さんに革の話をしてもらったり
ノグラボでは、何かと革について勉強する機会がありました。
そういった時、ユーザーの皆様が興味津々だったのが印象的でした。

そこで、これから数回にわたって、
今までとは違った角度で、革のお話をしばらくしましょう。
政治経済学的な視点で、皮革業界の分析をします。
しばらくおつきあいのほど、お願いします。

なお、革がどうやってできるか、とか、
クロムレザーとタンニンレザーの違いとかは、
過去のブログ記事や栃木レザーオーソドキシーの記事を
参照してくださいね。
また、柑橘系ビターさんの「革の話」連載記事も、まとまった内容になってます。
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)


さて、まずは、おもちのノグラボカバーをご覧ください。
(もってない方は、ぜひ今年はご購入を検討してくださいね)

実は、ノグラボで扱っている革小物は、それぞれ由来が全く違います。
(1)Whitehouse Coxの場合
ブライドルレザーをイギリスで縫製し、「革小物」として日本に輸入。
(2)イームズの場合
イタリアンオイルドレザー(原産国:イタリア)とアメリカ製のファブリック(アメリカからいったん日本に輸入)を、中国で縫製し、「革小物」として日本に輸入。
(3)オーソドキシーの場合
栃木レザーでなめし・着色した革を、オーソドキシーが国内で縫製。

どうです! 同じ革製品でもこれだけ違うんですよ。
縫製場所も、イギリス、中国、日本と違いますし、
革の生産国もヨーロッパと日本に分かれるのです。
(正確に言えば、WHCの革の原産国は数カ国にわたると推定されます)
ノグラボも意外にグローバルな動きと結びついていることがわかります。

実は、革はとてもグローバルな素材なのです。
革の原産国・生産国・加工国が入り交じり、革は世界中を旅しているのです。
現在のグローバル化した世界で、革小物がどのように流通しているのか、
少し、かいま見てみることにしましょう。

そして、現在の革の問題として、世界的な価格の上昇があります。
おかげでノグラボの革カバーもどんどん値上がりしてしまいました。
皆様には本当に申し訳ないと思います。

下のグラフを見てください。
我が国の牛馬原皮と皮革の輸入単価です。
graph1.jpg
社団法人日本皮革産業連合会ウェブより筆者作成)

特に皮革の単価が上昇しているのがわかりますね。
原皮の方は、確かに上昇していますが、それほどでもないこともわかります。

皮革と原皮って何が違うの? ってお思いかもしれません。
これらは順々に説明していくことにしましょう。

最後に、ここで論点をまとめていきましょう
(1)革はどこで生まれ、どこで「革」になり、製品となっているのか?
(2)革の世界的な価格上昇は何が原因なのか?

これらの論点にそって、革の世界を少しずつ見ていきましょう。
革カバーをお持ちの方は、
こんなに身近なものから、これほどまでにグローバル経済の動向がわかるのかと、
びっくりすると思いますよ。

投稿者 Nogulabo : 13:37 | コメント (0) | トラックバック

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